今現在を大切にすること

 毎日の帰り道で、鮮明に星が光っているのが見える。星座なんてオリオン座くらいしか知らないけれど、不思議と心に染み入るものがある。「ふたつのスピカ」という本を読んだせいかもしれない。神秘性にかけては、これほど普遍的なものはないな、と思う。

 ふとした時に、面白くないことがある。結婚して家庭を築くこともなく、社会に貢献する仕事を成すこともなく、派手に遊ぶことも知らない。そういう風に行きている。そんな人生は、つまらないのではないか。あまり気にしないようにしているつもりだけれど、幸せそうなカップルを見かけたり、酒の席で周りにからかわれたりすると、やはり引っかかるものだ。

 今月は「嫌われる勇気」という本を読んだ。その中に、興味深い考え方があった。過去や未来ではなく、今現在を最も大切にする生き方を知った。自分の解釈は下のようになる。

 過去について思い悩むことは非生産的だ。なぜなら、過去は変えられないからだ。どのようなトラウマであっても、それは当てはまる。トラウマは抗いがたい生理的作用を身体にもたらすが、なにがトラウマで、それがどのように影響しているか把握したとしても、直ちに治療の手がかりとはならない。

 未来に執着することも不幸をもたらす。夢や目標は美しいものとしてもてはやされるが、それが達成されなかった時のことはあまり語られない。一握りの到達者、偉人の下に、夢破れて絶望した人間たちがいる。そうならないためには、未来の為に今を犠牲にしないこと。結果に縛られないこと。努力と成長の過程を楽しむこと。

 物語の終わりに書かれていた言葉が印象的だった。過去や未来といったおぼろげな闇を見るのではなくて、スポットライトのあたった今この時を、ダンスを踊るように生きなさい、というような。それがとても良いと思った。