​ 雑感想「正解するカド」

​ 正解するカドを5話までみた。政府の役人、ネゴシエーター真道の物語。異世界からやってきた二キロメートルの巨大なキューブに対して、日本政府はどのように動くかという話。でかいキューブが出てくるところはうおおっとなるがそこからはかなり地味な展開が続く。そんななかで呼び出される科学者の品輪博士という女の子が見ていて面白い。好奇心旺盛で早口に喋るが、言っていることの端々に知性を感じさせる。そしてCV釘宮理恵。良い。キューブに飲み込まれた人は生きているか、どうやって破壊するか、というあたりの流れるような分析・推論・実験のあたり、かなり好きである。まあそれは本筋じゃない。そういう尖った人物はこの話の中ではかなり異質、例外的な存在だ。他の登場人物は真面目で優秀な人たちがちょっとした人間らしさを見せながら、事態の収拾へ向けて力を尽くす。そういう意味でこれはやはり、シミュレーションなんだろうなあと思う。リアルならどうなるか、と言うところを考えて演じているシミュレーション。キューブの中から出てくるヤハクィザシュニナという異星人、これもまたかなり、なんというか慎重に造形されたキャラクターで、ぶっ飛んだ設定は見られない。ただ考え方、持っているテクノロジが人類をはるかに凌駕していて、一つ間違ったら世界が滅茶苦茶になるだろうなという空気を漂わせている。けれど彼自身は超然とした知性ある神様のように描かれている。もしかしたら「現代に神様がおりてきたらどうする?」という思考実験なのかもしれないね。ともかく話を破綻させるような人物は絶対に出さんぞという感じ伝わってくる。

 絵作りの話も少しすると、見た感じ3Dモデルを使った今時のアニメという感じ。たぶん手書きはしてないんじゃないかな。エンドロールにUnityの文字が出ていたからきっとキューブやその他の演出面でそう言った技術が使われているのだろう。キャラクターは総じて地味目だけどスッキリしててとても見やすく好感が持てる。萌え萌えしてないし、ファンタジーなのは異星人だけなので老若男女におすすめできる。オープニング映像はとてつもなく美しい。荘厳な音楽もいいし、歴史とか世界とか生物とかそういうものを象徴する映像の中に、キャラクターをそっと置いてるだけの映像が良い。動き過ぎず感覚だけに訴えてくる感じのそれ。予算なかっただけかな。でもこの映像作品に関してはピタリはまっている。タイトルロゴがどんと出てきたときにおおおっとなる感じは間違いなくある。

 で、面白いかどうかっていう話をすると、難しい。つまらないことはない。だけど、ハラハラする感じはあまりないよね。何とかなるだろう。何とかしてくれるだろう。というのが登場人物たちの人柄から読み取れる。それは現実ならとても良いことなんだけど、物語的には案外むずかしいところだ。ひとりヤバい奴がいて、話をかき乱してくれてもいいんだけどなあって思ってしまう。あと真道さん真面目すぎるのでロリコンとか犯罪者とか何か欠点ぶち込んでもいいんじゃないかな。まあそれは冗談としても、とにかく平和的に穏便に物事が進んでいく。一応、国連がゴネてざわつく場面もある。ヤハクィザシュニナとその技術を引き渡さないと、国連決議で経済制裁やら武力鎮圧をちらつかせるとか、そういう場面。現実的に見て深刻な場面を描いているのだろう。けれども何というか僕個人は、へえそうなんだと他人事に見ていた。国の危機というものに関してとても鈍感なのは大人としてダメなのかもしれないが、個人の悩み、苦しみ、情熱、怒り、喜びそういうものの方がぐっと引かれるんではないかなと想像する。だから「ヤハクィザシュニナって何? どうしたいの? どうなるの?」というところが焦点になってくる。それが知りたいと思ってる中で、ゆっくり慎重に周りの国も配慮しながら交渉していくって言うのは物足りない展開なわけだ。ただひとつ言えるのは、こんな風にあれこれ書きたくなるような話の材料としては優秀な作品ではないかなと思う。どんなに面白くても、ぱっと思いつくことが派手で面白かったねとかキャラ可愛かったねとかしか出てこない作品だってあるわけで、そういう作品とは一線を画している。薄味だけど知っていたらドヤれる感じの佳作だと思う。