プラモデル

 雪までは降らなかったけれど、強く厳しい風が吹く。雨戸を閉めて冬ごもりしていると、少しは寒さもしのげるけれど、太陽の光も届かないので、いよいよ動きが鈍くなる。年末の休暇は特に酷い。日がすっかり昇った頃、暗闇から這い出てくる。目覚めが遅いのは寒さのせいばかりではない。きまぐれに買ったプラモデルを、夜明け前まで組み立てていたからだ。

 こんなことをするのは、何年ぶりだろうか。数年ぶりの作業は、とても不思議な心地がした。ゲームをしている時のような明瞭で熱っぽい楽しさはない。表現しにくいが、そこにあるのは、にじみ出るような静かな楽しみなのだ。

 角度を変えながらランナーからパーツを切り離す。凹凸を噛みあわせてパチリとはめ込む。小さすぎるシールを、複雑な曲面に貼る。やり損なって一人で苦笑する。それら手触りが伝える、かすかで根源的な喜び。隠れてしまうようなパーツの造形の複雑さ。思いがけない機巧で実現された可動部への驚き。エアコンの音しか聞こえない部屋で黙々と続けていく。奇妙な侘び寂び。

 小学生の頃は考えもしなかった。理屈もなしに、楽しめたことだ。わざわざそんなことを考えないと、楽しめたかどうか不安になる。自分が鈍感になっている証なのかもしれない。

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