なぜ僕はラジオを聞くのか

 夜、街路樹の電飾が光っているのを見かけて、ずいぶん気の早いことだと思った。けれど、それから数日後には雨が振り、そしてぐっと気温が下がった。冷たい風が、上着の生地をすり抜けてくる。もう冬は目前にある。

 ここ一年ほど、ラジオを聞くのが気に入っている。ガンダムサンダーボルトの主人公が聞いているような洒落た音楽番組ではなく、ゲーム(チェンクロラジオ)やアニメ(のぞえりラジオガーデン)それから、声優個人の番組(人生道でも飯田里穂)なんかを聞いていた。

 ラジオのことを誰かに話そうと思ったのだけれど、思い浮かべても「これが面白い」と言い切れるような何かを見つけられなかった。内容といえば世間話や大喜利、連想ゲームみたいな他愛のない遊び、あとは番組に関連する商品のお知らせ、といったものだ。ラジオのもたらす情報や話題が興味深いというわけではないように思う。でも、家に帰ると何時間も流しっぱなしにしていたりする。なにか、不思議な魅力があるのは確かなように思われた。

 もう一度注意しながら、改めてラジオを聞いてみると、ゲームやアニメのよくある他愛のない話で、共感できることが心地良いのだとわかった。たとえば、どうしようもなく好きなキャラについて語ったり、泣ける場面について熱く語ったりすること。他には、実はこんな仕掛けがあるんじゃないかという妄想も良い。ともかく、好きな作品であれば、話題はいくらでもある。

 思い返せば、小学生の頃なんて、ほとんどそういう話題しかなかった気がする。熱中していたゲームや漫画について話すことは終わりがなく、とにかく楽しかった。幼い頃に触れた作品が思い出深いのは、仲間とその楽しさを共有できたことも影響しているのかもしれない。そういう素朴な心地よさ、気心の知れた友人と雑談しているのと似た感覚を、ラジオは与えてくれる。

 こういった良い感覚を生み出す元になっているのは、ラジオの出演者が少人数であることだと思う。普通、ラジオの出演者は二人、多くても三人程度しかいない。毎週のように見慣れた面子で、小さな話をする。回を重ねるごとに、緩みが生まれる。間の抜けた話、ささやかな自慢、仕事の意気込み、一風変わった趣味や習慣。そういう人柄に触れることが妙に心地良い。ああこの人は面白いな、好きだなあと感じられる。

 心が震えるような、頭で火花が散るような特別さはそこにはないけれど、不思議と吸い寄せられるような安心感がある。最近始まったばかりの「ゆゆらじ」もまさにそういう雰囲気をたたえている。これは特定のアニメやゲームに関連した番組でもなく、動画付きなので相手を選ばない。慌ただしく時間が過ぎていくことに、疲れや寂しさを感じている人は聞いてみると良いんじゃないかと思う。

【第1回】RADIOアニメロミックス 内山夕実と吉田有里のゆゆらじ ‐ ニコニコ動画:GINZA