Undertale

 Undertale というゲームの話をしよう。色んなハードに移植されて、賞とかとったらしい。もっと優れた感想やレビュー、分析や考察があることだろうから、わざわざここに書く必要はまるでないんだけれども、自分が泣いたゲームを書かなくて他に何書くのって感じのつっこみが自分の中にあって、だから書く。まずは、あらすじを話しておくと、次のようなもの。

 プレイヤーは深い穴に落ちる。その穴はモンスターがだけが暮らす世界で、人間が来ることはほとんどなかったらしい。初めて会うモンスターは、やけに優しくて、母親みたいに手をつないで、プレイヤーを守ってくれる。だけど皆がそうというわけじゃない。モンスターにもいろんな奴がいる。人間が珍しくて、話しかけてくるやつがいる。人間が大嫌いで、殺意をみなぎらせて襲ってくるやつもいる。ジョークが好きで、ふざけてばかりのやつもいる。言葉の通じないやつもたくさんいる。プレイヤーはモンスターを倒してもいいし、和解してもいい。全てが敵になりうるし、友だちにもなりうる。

 あるタイミングで自分は、どうしようもなくなって、モンスターに手をかけてしまった。すごい気持ち悪さだった。演出上死んだように見えるだけで、本当は生きているんじゃないか、とか。なにかそれを取り返すイベントがあるんだ、とか思っていたけれど、モンスターは帰ってこなかった。当たり前のように話が進む。死は冷ややかだ。

 また逆に、友だちになれたときの笑える感じがたまらない。さっきまで、目を血走らせて襲ってきていたやつが、笑ってる。とぼけた顔が見れる。めちゃくちゃにふざけた演出がいっぱい見れる。なんかすげえな、このゲームって思う。誰かの特別になることって、かなり嬉しいことなんだな、と何か改めて思う。たぶん教育に良い。

 それで、モンスターの世界から人間の世界に帰るために旅をする。ぼちぼち楽しく、時々ひやひやしながら旅をする。そうして行き着く先のお城が、なんというかすごく良い感じに重い。話が綺麗にまとまる。誰も悪くないんだけど、戦おうか、みたいな感じの。歴史を踏まえると、戦わざるを得ない、みたいな感じの。一緒にお茶でも飲みたかったねといいながら戦う。そういうのがなんかね、強烈な何かを背負ってる感。すごくて良いね。しかも、それだけで終わらないものが詰まってる。

 絵作りとか、他の部分についてなんだけれど、正直なところ、グラフィックは全然たいしたことない。二十年前の水準。おじさんにとっては懐かしさを誘うものだけど、ほとんど白黒だし、綺麗とはいえない。それでも、遊んでいるうちに、十分良いものに見えてくる。黄色い花畑が、はてしなく優しさに満ちているように見えてくるし、強敵は、ため息が出るほど格好良くみえてくる。モンスターとたたかうときの、シューティング風のミニゲームも、然るべき試練のように見えてくる。音楽も良い。一度心が動き始めたら、全部ふさわしく見える。

 こぎれいじゃなく、こなれた感じもしない。だけど、十分魂みたいなのが詰まっている。だから、足すものも引くのもしなくていい。そんな感じの傑作。ただ、これが頂点、至高の作品だと言うつもりはない。絶対やっとけと言うつもりもない。ただ、記憶に残る宝物の一つにはなるんじゃないかなあと思う。