警察官をクビになった話の感想

警察官をクビになった話 を見た。あらすじは下記のようなもの。

 警察官になることを夢見る少年がいた。彼は努力の末に警察学校に合格する。しかし、何かと要領が悪い少年は、訓練で周りの足を引っ張ってしまう。それが何度も続くうちに、同級生からいじめを受けるようになった。教師も見て見ぬふりをするどころか、いじめに加担するようになっていく。寮という閉鎖的な場所で、暴力を振るわれ、罵られる日々が続く。

 状況は改善の兆しを見せない。その一端には、彼自身の能力不足があるのだろう。わかってはいるが、もともとの夢であった警察官を諦めることができない。彼は耐え粘り続ける。虚しい努力が続く。

 そんな努力を意に介さず、むしろ疎ましく思った教師たちは狡猾な策略を仕掛ける。親を呼び出し悪し様に言う。指導と称して食事時間を奪う。連帯責任で恨みを買うように仕向ける。

 それほど疎まれているのだと痛感した少年は絶望し、退学の道を選んだ。無能の烙印を押され、心の傷が癒えないまま職を求めるが、失敗し落ちこぼれていく。

 弱者を守るべき警察官が、弱者を虐げる矛盾の恐ろしさ。そして、夢に縛られる苦しみ。報われない努力の虚しさ。壮絶というほかない。

 少年はいったいどうすれば良かったのだろう。いじめに対してよく言われるのは「逃げろ」というアドバイスだ。なるほど、そうかもしれない。一方的で理不尽な攻撃に対してできるのは、それぐらいのことしか無いのかもしれない。

 ただこの場合、逃げることは、夢が断たれることを意味している。これまで積み上げた努力を放棄することを示している。過去の自分を否定するのは容易なことではない。知った顔をした大人が、そんな辛い決断を促すのは無責任な言葉のように感じる。

 でもそのままじゃ駄目だということは本人も感じているだろう。だから、警察官になれないとしたら、何をするのかというのを考えてもらうのがいいかもしれない。それ以外のやり方で、夢のいくらかを満たせる仕事。いや、仕事でなくたっていい。ボランティアか、あるいは趣味か。見苦しかったり、効率が悪かったりするかもしれない。誰からも褒められないかもしれない。それでも、やりたかった事の何割かは実現できるはずだ。

 もし、やりたいことに一ミリも関われなかったとしても、仕方がない。夢はなくとも生きていける。代わりに幸せと思しきものは、あちこちに漂っている。見つけようと目を凝らし、近付こうと藻掻くことはできるだろう。それが蜃気楼のように消えてしまうから、難しんだけれども…。夢が破れようがなんだろうが、その先にもいろいろな道がある。

 焼け石に水かもしれないが、水を注ぐ人の存在が、僅かばかりの勇気の種になることがあるかもしれない。もし挫けそうな人が居たら、なにか声をかけてやりたいと思う。