格ゲーの思い出

 9月ももう最終日。夏の暑さは鎮まり、ずいぶん過ごしやすくなった。赤とんぼがちらほらと飛んで、銀杏の実が落ちている。マツムシやらスズムシやらも鳴いている。秋の侘びしさか、少し昔のことを思い出す。なぜだか、中学生くらいのことを。その頃は格ゲー仲間がいて、休日は一日中対戦していた。

 一番最初に遊んだのは、おそらくスーパーファミコンスーパーストリートファイター2 だと思う。何故か父が持っていたので、それを友達の家に持ち込んで、延々と対戦していた。当時、ジャンプ強キック→しゃがみ強キックの連携と、当て投げ、波動拳、リバーサル昇竜拳ぐらいしか知らなかった、それでもかなり盛り上がったのを覚えている。戦略なんてものはなく、対空という言葉すら知らなかった。

 時間は流れて、ストリートファイターEXで対戦するようになった。このゲームではコンボのトライアルモードがあったので、皆コンボだけは上手くなった。ガイルが流行った。どすの利いた声に滅茶苦茶笑った。ダランやスカロマニアみたいなネタキャラも動かしていて楽しかった。どのキャラもコンボができると、そこそこに使いこなせている感じがして面白かった。戦略上の進化はほとんどなく、ジャンプが通ったら以前よりも火力が高くなったことくらいか。なんとなく、対空に昇竜拳を使うことは理解していたが、対空というワードは未だに知らなかった。できていたのは、ヒット確認くらいだろうか。当時は、雑誌も読んでいなくて、身内でばかりプレイしていたので、何も知らなかった。インターネットがちょうど始まったくらいで、情報の集め方も知らなかった。戦いの質はあまり関係なかった。気心の知れた仲間と遊ぶということが、それだけで楽しかった。

 その後 ストリートファイターZERO2 も遊んだけど、全く変化がなかったのでここでは省略する。自分たちにはオリコンは使いこなせなかった。革命が起こったのはギルティギアゼクスで遊ぶようになってからだ。テレビアニメをそのまま動かしているような滑らかさが凄いと思った。そして「ダッシュ」があるので、簡単に相手に近づくことができ、高速な中段技も豊富なので激しく攻め合うのが面白かった。そのころになると、学校や自宅でインターネットに触れられるようになった。そこで対空技6Pを知って、さらに空中コンボの気持ちよさを覚える。さらに情報が集まってきて「固め」とか「ディレイ」とか「割り込み」とか「投げ暴れ」とか「すかし下段」とか「ファジーガード」とか色々覚えた。僕はアンジを使って中下段同時攻撃とかやっていた。当然、普通の方法では受けられない。思い返すと、酷いことをしていたと思う。このゲームはフォルトレスキャンセルとか、霧ハメとか、○○ループとか、一撃でピヨる連携とか、色々酷かった。何度もコントローラーをぶん投げたくなったものだけれど、それがまた楽しかったと思う。

 続いてカプコン VS SNK もやっていたけど、やはりよく覚えているのはギルティギアイグゼクスの方だ。この頃は雑誌を買って攻略法を見てみたり、インターネットで対戦動画を見たりして、色々なことを覚えた。「カウンター限定コンボ」とか「持続を当てる」とか「直前ガード」とか。技のフレーム表の意味がわかるようになったのもこのころだ。だんだん複雑なテクニックを吸収していって、対戦は複雑化していった。技の相性もわかるようになってきた。しゃがみSと立ちHSのどちらが強いかとか、遠Sに6Pを合わせると勝てるとか。カイの 6P と 2HSの使い分けとか。キャラを使う前に技構成を見て、どれが牽制用か、対空用か、コンボ用かわかるようになる。

 それから大学入試やら何やらで、長い時間をともにした仲間は自然と解散した。空白が訪れた。(その間、猛烈なほどモンハンやぷよぷよに打ち込んだが、その話はまた今度にする)再び格ゲーを始めたのは大学院生の頃だ。研究室にいた後輩に誘われて、スーパーストリートファイター4を遊んだ。長いキャリアの差があったせいだろう、面白いほど勝ちまくった。それが相手に火をつけたらしく、彼はメキメキと上達していって、僕以上に上手くなった。偶然は重なるもので、ちょうどその頃、研究生の先輩からブレイブルーに誘われていた。僕は PS3 を購入して、2つの格ゲーに手を出すことになった。この時の変化としては、ハード付属のコントローラに限界を感じていたことがある。スパ4はシビアなコンボが多く、ずらし押しや同時押しのテクニックが必要だったので、アーケードスティックを購入して、さらに打ち込んだ。

 スパ4は投げ、グラップ、グラ潰し、ガンガード、これらの三すくみがよく出来ていると思う。ギルティギアは攻めが大幅有利だったので、その時は考えもしなかったことだが、対応する楽しさ、攻撃を受け流す楽しさを覚えた。また、前ステップはあるがダッシュがないので、接近し技を当てるということが思いの外難しいことがわかった。この頃にしてようやく「間合い管理」とか「差し込み」とか「差し返し」とかいうのを覚えていった。ウメハラの名前を知って、そのプレイに感動した。波動拳昇竜拳がいかに強力な技か、ということもわかった。対空の重要さがさらに身にしみた。相手を動かす技としての波動拳を覚えた。訓練されてない人がジャンプするポイントが、理解できるようになった。しかし、それから伸び悩んだ。今思うと、受けの楽しさを覚えて、攻めや崩しを蔑ろにしていたのが良くなかったのだと思う。

 ブレイブルーP4Uヴァンパイアセイヴァーの話もしておきたいが、そろそろいい時間になってきた。指も疲れてきたので、ここらでお開きにしようと思う。あまり深く考えたことはなかったけれど、僕は格ゲーと長い時間付き合ってきたのだとわかった。そして、時を経る毎に少しずつ強くなっていた。今では半分動画勢みたいになっているけれど、まだ後ろ髪を引かれる気がする。成長と、勝利の喜び。格ゲーの世界にはそれらがあることを知っている。