オクトパストラベラー

オクトパストラベラーというゲームを遊んだ。

どんなゲームかというと、八人の主人公を動かしながら、敵と戦ったり、ダンジョンを探検したり、街を歩いたり、ちょっとしたトラブルを抱えた人の手助けをしたり、という感じのRPG。九十年代のテイストを重視しているらしい。

僕が選んだのはオルベリクという元騎士。手短にいうと、次のような話。

オルベリクは友人のエアハルトと共に王様に仕えていた。双璧と呼ばれるほど信頼され重用されたが、とある戦争中にエアハルトが突如離反、王様を斬殺してしまった。国が滅び絶望したオルベリクは山村の村で名もない剣士として過ごしている。そんな中襲ってきた山賊の口から、エアハルトの名を耳にする。オルベリクは自らの正体を明かして、彼を追うことを決意した。

この導入は結構良かったと思う。名もない剣士が実は「剛剣の騎士」という大層な通り名を持つヒーローでした、という流れにはわくわくした。オルベリクは忠義に生きる武人という雰囲気だからさぞ激しい復讐劇になるだろう、と思っていた。ところが、そこからはエアハルト探訪記になる。エアハルトが罪を犯したのは何故か、ということを知るための旅。エアハルトは、結果的に何千何万の命を奪った男なのだから情状酌量の余地はない、と自分は思うのだけれど。

その後、色々あってオルベリクは剣を取る理由に悩む。そこでもドラマありそうなんだけど、特にない。関わってきた近しい人々を思い浮かべ、彼らを守るため剣を取る、という無難な結論に着地。大悪党を倒してオルベリクは村へ戻る。物語は終わり。うーん。僕はエンドロールで首を傾げた。一見ハッピーエンドなのだけれど、それで良かったのだろうか。釈然としない。

全体としてオルベリクは、もっといろんなもの背負ってるんじゃないか、深い悲しみを抑えているのかなと思っていた。しかし、クリアしてみるとその片鱗も見えなかったのが悲しい。あまりにも淡白。家族とか恋人とか姫とか、守るべき人を出して執着する方が良かったのではないだろうか。人々を守るためではなく、姫を守るためとか、妻子を殺した男を復讐するためとか、そういう強烈な感情を持っていて欲しかった。残念。オルベリク編については以上。他の主人公はクリアしてないのでゴメン。

上記のようにストーリーはもやもやさせられたけれど、遊んでいる道中はゲームとしてすごく面白かった。宣伝されていた通り、ドット絵は綺麗だったし、自然な明暗の表現、ぼやける遠景とかドット絵では見たことのない美しさがあった。街を見ただけでこれは新しいぞとわかった。バカでかいボスがでてびっくりしたり、主人公のジョブごとの衣装替えパターンで感心したり、細かな感動はたしかにあった。

バトルではブレイクとブーストという二つの仕組みが選択肢を広げている。そこそこ考えがいがあるし、上手くやればかなり強い敵とも渡り合える。簡単にレベルが上がって強くなるから、少し強い敵の出る地方へ行って、行かなくてもいいダンジョンを巡って、新しい街に着いたら買い物や盗みでさらにパワーアップして、また新天地へ…。というその繰り返しが中毒的に面白い。もうストーリーは進めなくて良いなと思えるくらい面白い。実際、プレイ時間の八割くらいはレベル上げをしていた。

あとひとつ、フィールドコマンドについて。これは、ほぼおかしい。罪のない村人に一方的な試合を挑んだり、モンスターけしかけたり、誘惑して連れ回したり、盗み働いたり。特に盗みはほぼリスク無しでリターン大なので、ゲームとしておかしい。バランスが破綻するほどではないから、村に宝箱が大量にあるだけだと思えば、おかしくはないのか…。そういう笑い話にできる程度には収まっているので、この仕掛けは成功しているのかもしれない。世界観的には、通りで堂々と行われる犯罪が見過ごされているので、心配になるけれど。

まとめると、オクトパストラベラーは変なゲームだったなと思う。犯罪じみたフィールドコマンドのせいで世界観がカオスで、ストーリーも何だか変。でも絵は綺麗だし、広い世界をうろうろして、ただただレベル上げしてるだけで楽しい。こういうゲームもっとやりたい。