どうにか新社会人編

まいど。

 就職したての頃は、とにかくびくびくしていたと思う。ここで失敗したら、人間失格の烙印を押されてしまうのだと思って、とにかく慎重にやろうと決めていた。プログラミングに関する業務はぼちぼちうまく行ったが、それ以外の雑用が大変だった。朝礼の司会、電話対応、弁当の注文、行事の後片付けや前準備、それから幹事。

 はじめは何をしても膝が震えるし、手も震える、声も震える。そういう自分の傾向を知っていたので、予め一人でぶつぶつと朝礼の練習をしたり、電話の練習をしたりした。そんなふうにシミュレーションしている姿はわりと間抜けだったかもしれないが、そのかいあって、大きなミスなくこなすことができた。

 とはいえ、練習できないこともある。それは何かというと、飲み会の幹事だ。さっぱりわからない。相談できる友達もいない。ググったりしてみるがよくわからないし、意識高い系のサイトが多くて妙に腹が立つ。とてつもなく情けない気持ちになってくる。「一体俺は何をしているんだ…」仕方がないので、一番優しそうな先輩に尋ねてみた。その時のことはよく覚えている。

 僕はかなり長い前置きをした。だいたいこんな感じだったと思う「本当に仕事とは関係なくて、こんなことを聞くのは場違いかもしれず、本当に情けない話で申し訳ないんですけども…幹事ってどうすればいいんですか?」その場にいた皆が笑った。そして「それは誰にでも聞いていいし、誰でも答えてくれるはずだから…」と教えてくれた。

 それであっさり解決すればよかったのだけれど、飲み会というのは自分にとって魔境だ。先輩に店を選んでもらうところまではこぎつけたが、そこからどうするのかは指南されなかった。ぶっつけ本番に挑んでみたところ、まず注文の仕方がわからない。いや、正確にはわかるが、どれを頼めばいいかわからない。メニューが多すぎる。今なら、とりあえず刺身盛りとか串盛りみたいな、いろいろ食べれるやつを選べばいいとか、なんとなくわかるけどとにかく当時はよくわからなかった。だからよくわからない感じでランダムに頼んだら料理が足りなくて困った。あとざわざわしすぎて声が通らないとか。いろいろとにかく疲れた。

 その後もさらにいろいろな謎の作法があることを知った。注文とりやすいように席は入り口に近い方に座るとか。グラスが空きそうな人に声をかけて次の飲み物を聞いておくとか。空になった皿は片付けやすいように集めておくとか。そういう気配りが存在することを知って目眩がした。やりたくない。できそうもない。本当に、飲み屋についてはいろいろ文句を言いたい。もっとわかりやすくしろといいたい。生ビールの「生」という無意味な言葉を消せ。水割りとかロックとか説明しろ。メニュー見やすくしろ。謎のレイアウトやめろ。単品は別の冊子にしろ。とかね。

 幹事は何回かやったけど、どれもしんどかった。ピザを頼むのですらしんどかった。皆野菜を食べるのか? サイズはどれくらいだ? とかそんなことで悩んだりとか。頼んだのに届かなくてイライラしたりとか。適当にビール注文してたらキリン淡麗生買ってこいとか言われたりとか。とにかくよくわからないことだらけだ。今になって思うと、全部どうでもいい。

 あとは忘年会もやった。そのときは出し物を要求されたのでこれも悩んだ。同期は僕と同じくらい社会に慣れてなくて頭の回らないメンバーだったので、僕がひたすらググった。そして一番無難そうでお金もかからない、ジェスチャーゲームにした。やっつけでうまくいくはずがないと思ったので、司会原稿を作ってひとりでシミュレーションした。今思うとバカバカしい。

 他にもいろいろあったはずだけど、半分くらい幹事についての愚痴になってしまった。僕は必死にそれを仕事として取り組んだけれど、楽しみながらそれをこなせる人もいるだろう。本当に感服する。と同時に、そのような方々にはぜひ、進んで自ら幹事を行ってほしい。そう祈る。