悲しいときどうするか

 嬉しいことはともかく、本当に悲しいことは、誰にも言わないようにしている。たとえば、親しい人が命を落としたときが、そうだ。そのことを話しても、誰も自分の悲しみを癒やすことはできないし、周りの空気が重くなる。なにより、死んだ人は戻ってこない。だいたい、本当に悲しいことは、どうしようもないことなので相談しようがないのだ。

 それに、有名人が亡くなった時に流れるニュースも嫌いだ。さして親しくもないし、関わりもなかった人たちが、追悼のメッセージを送る。生前の言葉や映像を引っ張り出してきて放映する。葬儀の様子をテレビで流したりする。そんなことをして意味があるのか疑問だ。誰のためなのだろう。死んだ人の為ではないだろう。その人の周りにいる悲しんでいる人たちはそれを望んでいるのだろうか。悲しいできごとを利用して注目を集めているだけのような気がする。

 本当の悲しみを自分が持ってないのかもしれない、と思って不安になる。どんなに悲しくても、面白いことがあれば笑ってしまうからだ。どんなに悲しくても、美味しいものを食べたら嬉しくなるし、だんだん心が上向きになる。そういう、情の薄さが怖い。昨日は悲しいと言っていたくせに、今日はケロリとしているじゃないか、とそんな風に思われそうで、悲しめない。

 本当に悲しいときはどうしたらいいのだろう。短い時間考えただけでは、答えは得られなかった。