表現不能なものを褒める

椿の花が落ちていた。花びらになって散るわけではなく、まるで切り取ったように、根本からぽとりと落ちていた。調べてみると、それが自然の振る舞いだということがわかった。気がつけば、梅の花も散っている。部屋着を一枚減らした。灯油を使い切るために、…

余計なお世話

休日に早く目が覚めたけれど、なにもすることがなくて、ぼんやりしていた。座椅子の上で毛布にくるまっていると、睡魔がやってくる。テレビの音が遠い。これは昼寝すべきだと思った。雀のさえずりに、斜めに差し込む日差し。よれた毛布を直して布団に潜り込…

決められない事と直感と理屈

目を覚まし体を起こしてみると、カーテンの隙間から雪景色が見えた。この冬では初めてのことだ。外へ出ると、隣の家の垣根に使われている広葉樹が雪をかぶって、しな垂れていた。空気は冷たいが風はなく、雲は晴れて太陽は明るかった。通り過ぎた電車が突風…

歳を重ねて

年末の懇親会を終えてからは、家でじっとしていた。去年プラモデルを組み立てたことを思い出す。特別な喜びはなかったが、どこか厳かで徳が高まるような気がした。今年も静かに、何かを組み立てるのも良いかもしれない。膝にかけている毛布を目当てに、うち…

感謝しているか?

紅葉が進み、秋の服では、耐え難いほどになってきた。キーボードを叩く指先が冷たい。暖房はつけていない代わりに、たくさん重ね着していているのだが、それでも足りない部分がある。ついさっき淹れてもらった温かいはずのお茶も、冷たくなっていた。 Daigo …

二十数年越しに将棋を学ぶ

風邪を引いた。弱った体で俯いて歩いていると、キンモクセイの花が散っていた。見上げると生きた樹があった。爽やかな香りがする。 少し将棋の話を書く。初心者(僕)の考え方が、どのように変化してきたかということを整理してみたい。駒の動かし方を覚えた…

人生とプラスとマイナス

三十歳になって、酒を飲んだあと、いま生きている理由や、何を望みながら暮らすだろうということを考えた。何のために生きるのだろう。家族のため。血統のため。会社のため。社会のため。国のため。人類のため。誇りのため。趣味のため。日常の喜びのため。…

どうぶつの国

何度も寝返りを打った。深夜四時半をすぎてもまだ、眠気が来る気配はない。仕事をしている日中はただひたすら眠いというのに。感覚の狂った身体にうんざりする。もう朝だということにして、身体を起こすことにした。真っ暗な中に、コオロギ達の耳触りの良い…

時速二キロメートルの散歩

先日、ポケモンGOがリリースされた。普段、ゲームの話題がない社内でも、半数以上の人が遊んでいるらしい。僕もインストールしてみたが肌に合わず、レベル四で足踏みしている。外へあちこち出歩く習慣がないからだ。その上、自宅の半径一キロ程度にはポケス…

俺に働けって言われても酉

一言で言うと 冒険者ギルドを経営することで、主人公の抱えた借金を返済していくゲーム。 あらすじ あなたは、家に引きこもって生活している。家賃の支払は滞り、膨大な借金を抱えるようになった。ある朝、あなたの住むあばら屋へ大家の娘マクラツムが訪れた…

植物の葉による拡大再生産

曇りや雨の日が続いた。変わらないことは数えきれないほどあるけれど、変わったことも多かった。上着を羽織る必要がなくなった。畑が二つ潰れて、駐車場を作る工事が始まった。踏切近くの家から不慣れなベース音が聞こえるようになった。小雨の日に、一匹だ…

チェインクロニクル第二部を終えて

家の二階にいると、スズメの声が聞こえるようになった。あまりに近くから聞こえるものだから、窓から顔を出して調べてみた。ちょうどエアコン裏の壁から小さな影が飛んでいった。配管が通っている穴の隙間が、住処になっているらしい。どうしてそこに落ち着…

不満を分析する

我が家ではまだ、たびたび暖房をつけているが、日中は少し暖かくなってきた。梅の花が咲いているなと気づいた頃には、隣の庭にも赤い花が咲いていた。残念ながら、名前は知らない。田畑もずいぶんと賑やかになっている。白詰草でいっぱいになっているものも…

勇気について

天気の悪い日が続いた。雪や雨にふられて、濡れながら走るような日が何度もあった。どうにか晴れた日も、外に出ると霜が降っていたり、刺すような冷たい風が吹いていた。どれだけ重ね着をしても、顔だけは寒さに耐えなければならない。顔を守るとしたら、銀…

ゲームと緊張について

三日も雪が降り続いている。最高気温はマイナス三度。道路も、屋根の瓦も、庭木も雪に覆われてまぶしく感じるほどに白い。車も通らない道を制服の中学生が三人並んで歩いている。少し外に出てみたが、足首まで埋まるほどの積雪に心がしぼんだ。一時間もぐず…

なぜ神様は人々を救わないのか

ここ一ヶ月は毎週三回くらい鍋ものを食べた。身体が温まるし、すぐ作れるからこれが一番良いのだと母は言う。もちろん飽きているのだけれど、文句はない。薄味の熱いスープをすすりながら、柔らかくなったキャベツを食べるのが、たまらなく美味かった。スト…

なぜ僕はラジオを聞くのか

夜、街路樹の電飾が光っているのを見かけて、ずいぶん気の早いことだと思った。けれど、それから数日後には雨が振り、そしてぐっと気温が下がった。冷たい風が、上着の生地をすり抜けてくる。もう冬は目前にある。 ここ一年ほど、ラジオを聞くのが気に入って…

家事について

朝の寒気がはっきりと感じられるようになってきた。青々と波打っていた水田の爽やかさを書こうと思っていたけれど、その機会もなく実りの時期は過ぎ、刈入れが終わって今はもう丸裸になってしまっている。どうにも、時間がすぎるのは速い。 ちょうど毛布を引…

プログラミングの楽しい所

連休はあっという間に過ぎ去って、気がつけばもう九月が終わろうとしている。すっかり暗くなった道を歩いていると、雲の合間に、まぶしいほどの満月が見えた。ただの晴天よりもずっと情緒があるように感じられた。普段、単純さを好むくせに、このようなもの…

囲碁の見かた

気温はゆっくりと下り、蝉ももう鳴くのをやめてしまった。遠くで打ち上がる花火の音が聞こえる。窓越しに空を探してみたが、暗い雲があるばかりだった。聞き間違いだったかもしれない。 食事時、ぼんやりとテレビを見ていた。NHKの囲碁番組が流れている。囲…

「CHAOS;HEAD NOAH」の感想と、ある種のオタクの生き方について

梅雨と台風が過ぎてから、殴りこむように猛暑が訪れた。もはや冷房なしではいられない。アイスクリームだのなんだの氷菓子を父が大量に買ってくるのだが、僕の気が向いた時には冷凍庫は空である。それもまた暑さのバロメーターなのかもしれない。 「CHAOS; H…

映画ラブライブの感想

毎週のように雨が降った。激しい雨は少なかったが、だらだらと降り続く長雨が多かったように思う。中途半端な優しさが梅雨らしい。色あせた紫陽花が崩れそうになっている。やがて夏らしい夏が来るだろう。 ラブライブの映画を観た。聞き覚えのあるピアノのメ…

プログラミングの試行錯誤と最後の手段

夜風を取り入れるために窓を開けると、蛙の鳴く声が聞こえた。もうしばらくすると蚊が入ってくるようになるので、この空気を味わえる季節は長くはない。遠くから聞こえる、表現しがたい滑らかな音は風の音だろうか。あまり考えたこともなかったが、風の音に…

「楽園追放」と人間らしさについて少し

窓を開けていると学生たちのはしゃぐ声が聞こえる。元気が良いなと見下ろすことができるのは、大人の特権だ。社会人になってから、卒業も進級もなく、一定の速度で生きている。どちらも幸せなことだと思う。 楽園追放というSF映画を見た。映画自体の面白さは…

火のゆらめき

今日はとても暖かく、良い天気だった。ただ駅まで歩く短い時間でさえも、特別な穏やかさに包まれているかのように感じられる。母に言われてようやく気づいたのだけれど、庭の衰えた桜も、どうにか花を咲かせていた。 つい先日、ボードゲームに参加させてもら…

今現在を大切にすること

毎日の帰り道で、鮮明に星が光っているのが見える。星座なんてオリオン座くらいしか知らないけれど、不思議と心に染み入るものがある。「ふたつのスピカ」という本を読んだせいかもしれない。神秘性にかけては、これほど普遍的なものはないな、と思う。 ふと…

ガールズ&パンツァーの感想

寒さに凍えて、病人のように毛布にくるまって過ごしている。街路樹のイチョウが葉を落として丸裸になっていた。生物が活動するのに適した季節ではないということだろう。人間だって休んでいるべきだと思うけれど、社会は一定の流れを保たなければならないら…

プラモデル

雪までは降らなかったけれど、強く厳しい風が吹く。雨戸を閉めて冬ごもりしていると、少しは寒さもしのげるけれど、太陽の光も届かないので、いよいよ動きが鈍くなる。年末の休暇は特に酷い。日がすっかり昇った頃、暗闇から這い出てくる。目覚めが遅いのは…

教えるということ

まだ十分に紅葉もしていないのに、十二月が訪れようとしている。今日はずっと、雨が降っているのが聞こえていた。雨というのは、考える時間を取るにはちょうど良い。出かけるのに都合が悪いし、しみじみとした気持ちになるからだ。 ハッカソンのイベントの手…

スコアランキングの熱と虚無の時間

先月の末に一度見たっきり、赤とんぼを見かけない。何かの勘違いか、まぼろしだったのかもしれない。それでも、暦の上では秋が来て、少しずつ冷えるようになってきた。今月は「片道勇者」「Crypt of Necrodancer」「ブレイブルー クロノファンタズマ」あたり…